スクリーンを独り占めするという祝福の中で鑑賞することができました。
ちょっと観てみるかなといった軽い気持ちで足を運んだのですが、これが素晴らしい作品でした。
シネスコの画面いっぱいに映し出される古代アレクサンドリアは、
地中海の恵み豊かな、美しい都市でありながらも、
冷静な知性、純粋な熱情、醜悪な情念、即物的な侮蔑、衆愚な不寛容などに満ちていた。
古代アレクサンドリアの住民たちが経験した先鋭な対立とその結着点は、
私たち人間に「進歩」といった言葉が歴史的に無縁であったことを教えてくれる。
私たちは、本当にちっぽけで、虫にも劣る存在でしかない、と思わざるを得ない。
私たちは、何かを失い続けてきたのではないか、
時間を遡れば遡るほど、その世界では、私たちとは比べものにならないくらい、
知的で豊かな社会を築き得ていたのではないか、と。
とにかく、哲学者であり、天文学者、数学者でもあったヒュパティアを演じた
レイチェル・ワイズの揺るぎない凛とした佇まいが、いろいろな意味で美しい。
その彼女に無垢ともいえる思慕の念を抱いた男たちが登場する。
彼らはあまり潔くはないけれども、その中で、彼女に奴隷として仕えた、
いったんは彼女を裏切る、ダオスと呼ばれる人物がいる。
彼は身分の違いを弁えながらも、抑えきれぬほどの思いを彼女に抱いている。
彼の激烈な思いの貫通は、映画の終わりで見せる凄絶な潔さによってしか訪れなかった。
苦しいほどのせつなさだけが残り、空しい。
観るべき点が多々あり、未見では寂しい。
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