岩井克人『会社はこれからどうなるのか』

内容紹amazon

この危機[注=サブ・プライム・ローンに始まる世界的金融危機]が、まさにアメリカ経済を震源地としたこと、しかもその発端が株主利 益の最大化を唯一の行動原理としてきたアメリカの金融市場におけるバブルとその崩壊によるものであったことは、ITバブルの崩壊やエンロン事 件によってす でに大きく揺らいでいたアメリカ型の会社のあり方に対する信頼を、根底からつき崩すものとなりました。会社は株主のものでしかないという株主 主権論が理論 的な矛盾をはらんでいるという本書の基本命題が、はからずも現実によって実証されてしまったのです。さらに、今回の危機をもたらした住宅市場 や金融市場に おけるバブルの背後には、全世界的なカネ余り現象(流動性過剰)があったことを、多くの人が指摘しています。それもまさに、ポスト産業資本主 義においては おカネの支配力が相対的に弱まっていくという、本書のもう一つの基本命題の現実化にほかなりません。このグローバル経済危機は、株主主権論的 な会社のあり 方の凋落をもたらすポスト産業資本主義という舞台の、
まさに劇的な幕開けといえるでしょう。


では、このことは、八〇年代に一世を風靡した日本型の会社がそのまま復活していくことを意味するのでしょうか?

この問いに対する私の答えは、一見すると矛盾しています。それは、日本の会社は、「変わらなくてもよい」が、「変わらなくてはならない」と いうものです。

(「平凡社ライブラリー版へのまえがき」より)