- 小論文では、課題あるいはテーマが与えられているのが普通である。最初になすべきことは、その課題で何が問われているか、あるいはそのテーマはどういう問いを含んでいるかをよく考えることだ。そうすれば、その問いにどう答えたらよいかも見えてくるはずである。
上の例題で言えば、問いは「外国語ができるようになるためには、外国に行きさえすればよいのか?」である。この問いに答える際の判断のポイントは、「行きさえすれば」というところだろう。
課題文を読んで、自分の考えを述べる場合もある。そのときも、課題文に含まれている問いかけやメッセージ(主張・意見)は何かを見つけ出すことが大切である。
- 小論文には、たいていの場合キーワード(上の例題では「神話」という言葉)が含まれている。その言葉がどういう意味で使われているかも把握しておきたい。
上の例題では、「神話」という言葉の意味が説明されているので誤解は生じないはずだ。しかし、説明の有無にかかわらず、それが「外国に行ったとしても、外国語が上達しないこともある」という意味であると気づかねばならない。
- 自分の意見を述べるときは、その理由を具体的に示す。そのとき、理由はひとつだけでなく、できれば二つとか三つ示したい。なお、理由を複数あげるときは、もっとも重要な理由を最後にもってきて、結論へとつなげてゆくと良い。
- YesかNoかを問われているような課題の場合には、YesかNoかをはっきり答えなければならない。もちろん、なぜYesなのか、あるいはNoなのか、その理由も(できれば三つぐらい)示さなければならない。
- Yesと答えることもNoと答えることもできるような課題のときは、YesとNoの両方の場合を比較しながら、自分はどう考えるか(自分の意見はYesなのかNoなのか)を結論で示す。
- 論述の順序だが、結論でYesを選ぶのであれば、Noの場合を先に述べてから、そのあとでYesの場合を反論として述べ、結論のYesにつなげてゆくとよい。結論がNoのときは反対の手順をふむ。
800-1000字程度の小論文では、Yesの場合とNoの場合の理由をそれぞれ複数あげるのは字数の関係で実際には難しい。その場合は、結論につなげる本論後半の部分(つまり反論の部分)に重点をおいて論じるべきある。
最初にあげた例題は、YesかNoかをはっきりと問うような課題ではないが、どういう順序で論を進めているか注意しよう。
- 第1段落(基本的な考え方:序論)
外国語をその国に行って学ぶことは、大きな効果が期待できる。
- 第2段落(課題に含まれた問いかけを提示:序論から本論への導入)
しかし、行きさえすればよいと言えるか?
- 第3段落(本論1:Yesの観点から)
十分な力をつけている人は確かに上達するだろう。
- 第4段落(本論2:Noの観点から)
しかし、力がない人、安易な考えで行く人は、上達するとはかぎらない。
- 第5段落(本論3:Noの観点から)
反対に、悪い結果に終わることさえありうる。
- 第6段落(結論)
「行きさえすれば」という考えは危険である。効果を期待しようと思えば、事前の準備が大切である。
本論では、外国に行った場合のプラスの面(条件が整っている人には効果がある)をまずあげてから、次にマイナス面(安易な気持ちで行ってはだめ)をあげ、結論(「行きさえすれば」という考えは危険、事前の準備が大切)へとつないでいる。
[小論文のチェックポイントと評価の基準]
- 課題を正確に受けとめているか? 課題文のメッセージをしっかりと受けとめているか?
課題で問われていることを正確に受けとめていないと、課題と答案の内容や結論とのあいだに「ずれ」が生じる。課題文を読んで自分の意見を述べるタイプの小論文の場合は、課題文で何が問われているかを見つけ出さないと、何が問題か、また自分の意見はどうか(YesかNoか)も述べようがなくなる。
- キーワードがある場合、その意味をきちんと理解しているか?
キーワードの意味をきちんと理解していないと、課題で問われていることを間違って解釈してしまう。だから、答案の内容も結論も、見当違いなものになってしまうことになる。
自分でチェックするのが難しいときは、誰かに見てもらってアドバイスを受ける方がよい。
- 全体の構成はきちんとできているか?
- 序論:課題・テーマを受けとめ、そこで何が問われているか、これから何について論じるのかを書く。
- 本論:事実や具体例をあげながら、それに基づいて自分の意見を組み立ててゆく。
(説得力のある意見は、なぜそうなのかという理由がしっかり述べられている。)
- 結論:本論でのべられたことをふまえながら、意見をまとめ、序論で示された問いに答える。
- さらに、次の6つのことに注意
- 文字と語
漢字や仮名遣いに問題はないか?
漢字で書くのが普通の語を平仮名で書いたりしていないか?
(たとえば、「環境」と書くところを「かんきょう」としているような場合)。
適切な語が使われているか?
意味もよく分からず使っている語がないか、不正確な使い方をしている語がないか?
話し言葉、俗語、流行語などを使っていないか?
- センテンス=文
主語と述語がきちんと対応しているか?
- パラグラフ=段落
一つのパラグラフには一つの話題という原則をふまえているか?
(一つのパラグラフにいくつもの話題をつめこんだりしない。関係のない話題はもちろん不可だが、たとえ関係があることでも、別の話題は別のパラグラフで取り上げるように。)
- 論理性
話題の展開の仕方に首尾一貫性があるか?
(あるパラグラフとその前後のパラグラフとのあいだに、きちんとした筋道がつけられているか。)
- 全体としての評価
内容・着眼・まとめ方など。
- 原稿用紙の使い方
マスのついた原稿用紙で書くときは、一定の約束がある。たとえば、句読点(
、 。)は1マス分を使うとか、行の最初には 、 。 ) をおかない、など。
小論文を書くのは楽ではない。正解がない問いを受けとめて、自分で考えなければならないのは「うっとおしい」ことだ。しかし、まさにそれこそが、本当の意味で考えることの始まりであり、大学で身につけるべきことでもある。どうしたら「良く」考えることができるようになるか、まずはそのことを頭におきながら小論文に取り組んでもらえたらと願っている。