小論文チェックポイント

長崎外国語大学 戸口民也

2003年2月24日 掲載

以下の例は、1997年度「長崎外国語短期大学 入試ガイド」に掲載した課題作文のチェックポイントと作文例がもとになっています。
その後、これを加筆修正し、タイトルも「小論文のチェックポイント」に改め、長崎外国語大学ホームページの「入試案内」にしばらくのあいだ(たしか、2001年の夏から2002年にかけて)掲載していましたが、現在は削除されています。そこで、今回、改めて自分のホームページに掲載することにしました。
大学では、レポートを書く機会が数多くあります。4年生になると、卒業論文を書くことにもなります。そのための基礎訓練となるのが小論文です。学生諸君の参考になれば幸いです。

[例題]

 「外国に行きさえすれば、外国語も自然と上達するというのは神話である」という指摘がある。なぜこのような指摘がなされるのか、その理由を考えて、800字以内で答えなさい。
 なお、「神話」という言葉は「一般にはそう信じられているが、実際には疑わしいこと、あるいは事実に反すること」の意味で用いられている。

[答案例]

(20字×40行) ・・・・D・・・・I・・・・N・・・・S
 外国語の力をつけるにはその国に行って勉
強するのが一番と思うのは当然である。国内
では、まさに勉強しているときしか外国語と
接する機会はない。しかし外国に行けば、人
とのコミュニケーションをはじめ、日常生活
のすべてにわたってその言葉が使われること
になる。そうした環境の中で生活しながら勉
強すれば、国内で学ぶよりもずっと大きな効
果が期待できるだろう。
 それでは外国に行きさえすれば、外国語も
自然と上達するものだろうか。
 行く前からよく勉強し、十分な語学力がつ
いている人がその国に行ってさらに勉強する
のなら、有利な環境を活かすことができるし、
言葉も上達するだろう。
 しかし、力がない人が安易な気持ちで外国
に行っても、上達するとは限らない。ろくに
努力もしないまま、ただ外国にいるというだ
けだったら、どれほど長い間いたとしてもた
いして進歩はしないだろう。日常生活ではそ
れほど高度な語学力は必要ないし、買い物な
どもたとえばスーパーマーケットに行けば一
言もしゃべらなくともすんでしまう。
 たとえ努力したとしても、外国で勉強をは
じめたときのレベルが低すぎると、なかなか
進歩しないだろう。日本語が使えない環境で
学ぶのだから、語学力がないと勉強も十分に
はできない。悪くすると、ノイローゼになっ
てしまうかもしれない。言葉が上達するどこ
ろか、ほとんど何も得られず、みじめな気持
ちで帰国することにもなりかねないのである。
 だから、外国に行きさえすればなんとかな
ると考えるのは危険である。それが有利には
たらくか、逆に重圧になるかは、行く人次第
なのだ。事前に十分な準備があったとき、は
じめて外国に行く効果も期待できる。外国語
でコミュニケーションができる程度の語学力
を身につけ、またその国の人々のことや歴史、
文化を知る努力を出発前にしておくことがむ
しろ大切なのである。

[小論文を書く上で注意すべきいくつかの点]

  1. 小論文では、課題あるいはテーマが与えられているのが普通である。最初になすべきことは、その課題で何が問われているか、あるいはそのテーマはどういう問いを含んでいるかをよく考えることだ。そうすれば、その問いにどう答えたらよいかも見えてくるはずである。
     上の例題で言えば、問いは「外国語ができるようになるためには、外国に行きさえすればよいのか?」である。この問いに答える際の判断のポイントは、「行きさえすれば」というところだろう。
     課題文を読んで、自分の考えを述べる場合もある。そのときも、課題文に含まれている問いかけやメッセージ(主張・意見)は何かを見つけ出すことが大切である。

  2. 小論文には、たいていの場合キーワード(上の例題では「神話」という言葉)が含まれている。その言葉がどういう意味で使われているかも把握しておきたい。
     上の例題では、「神話」という言葉の意味が説明されているので誤解は生じないはずだ。しかし、説明の有無にかかわらず、それが「外国に行ったとしても、外国語が上達しないこともある」という意味であると気づかねばならない。

  3. 自分の意見を述べるときは、その理由を具体的に示す。そのとき、理由はひとつだけでなく、できれば二つとか三つ示したい。なお、理由を複数あげるときは、もっとも重要な理由を最後にもってきて、結論へとつなげてゆくと良い。

  4. YesかNoかを問われているような課題の場合には、YesかNoかをはっきり答えなければならない。もちろん、なぜYesなのか、あるいはNoなのか、その理由も(できれば三つぐらい)示さなければならない。

  5. Yesと答えることもNoと答えることもできるような課題のときは、YesとNoの両方の場合を比較しながら、自分はどう考えるか(自分の意見はYesなのかNoなのか)を結論で示す。

  6. 論述の順序だが、結論でYesを選ぶのであれば、Noの場合を先に述べてから、そのあとでYesの場合を反論として述べ、結論のYesにつなげてゆくとよい。結論がNoのときは反対の手順をふむ。

800-1000字程度の小論文では、Yesの場合とNoの場合の理由をそれぞれ複数あげるのは字数の関係で実際には難しい。その場合は、結論につなげる本論後半の部分(つまり反論の部分)に重点をおいて論じるべきある。

最初にあげた例題は、YesかNoかをはっきりと問うような課題ではないが、どういう順序で論を進めているか注意しよう。

本論では、外国に行った場合のプラスの面(条件が整っている人には効果がある)をまずあげてから、次にマイナス面(安易な気持ちで行ってはだめ)をあげ、結論(「行きさえすれば」という考えは危険、事前の準備が大切)へとつないでいる。

[小論文のチェックポイントと評価の基準]

小論文を書くのは楽ではない。正解がない問いを受けとめて、自分で考えなければならないのは「うっとおしい」ことだ。しかし、まさにそれこそが、本当の意味で考えることの始まりであり、大学で身につけるべきことでもある。どうしたら「良く」考えることができるようになるか、まずはそのことを頭におきながら小論文に取り組んでもらえたらと願っている。


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