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2013年度春季 長崎外国語大学 入学式式辞

2013年度春季 長崎外国語大学入学式 式辞

2013年4月3日
長崎外国語大学 学長 石川昭仁

  長崎外国語大学に入学された皆さん、おめでとうございます。長崎外国語大学の全教職員を代表して心から歓迎の意を表します。また、ご家族をはじめ関係の方々にも、合わせて心よりお祝いとお慶びを申し上げます。

  2013年春の1年次入学者は、128名です。そのうち、8名が留学生です。社会人入試で入学された4名の方もいらっしゃいます。これとは別に、2年次・3年次の編入学・転入学が8名です。また本学にはJASINプログラム、NICSプログラムと呼ばれる外国人留学生のための短期留学プログラムがあり、このプログラムの留学生33名も本日の入学式に臨んでいます。昨年秋から継続して学んでいる学生もいますので、アメリカ、フランス、中国・台湾、韓国からの短期留学生の数は83名となります。今日は、その中で春学期入学の33名の新入生がここに集っています。先ほど、新入生の皆さんに壇上に上がっていただき、一人ひとりと歓迎の握手を致しましたが、これは我が大学が大学の主役である皆さん一人ひとりを大切に思い、それぞれのニーズに応じた学習支援を行うとともに、満足度の高い教育を提供するという決意の表明でもあります。

  さて、皆さんは、この入学式がキリスト教の礼拝のスタイルで行われていることに、すでにお気づきのことと思います。皆さんが手にしている入学式のプログラムの表紙をご覧ください。そこにはラテン語でvia veritas vita(わたしは道であり、真理であり、命である)と記されています。この「道」、「真理」、「命」は、先ほどの宗教主任による聖書の朗読にありましたように、「ヨハネによる福音書」に書かれているもので、イエス・キリストが自らを明かして述べた言葉です。表紙の一番上に記されている校章は、この言葉の三つの頭文字、すなわちv を三つ組み合わせたもので、キリスト教精神に基づく建学の精神を表しています。長崎学院・長崎外国語大学は、キリスト教精神、つまり「真理と自由の探求」、「隣人愛」、「献身と奉仕の精神」を教育の根本理念としているのです。

  皆さんは長崎外大で「何のために、どのような力をどのように方法で何のために学ぶ」のかということについてこれからお話しいたします。
  長崎外国語大学は幅広い国際的な職業人、つまりグローバル人材の育成を目指しているのですが、その背景には、現代社会におけるグローバル化、グローバリゼーションの急速な進展があります。グローバリゼーションというのは、簡単に言えば「人」、「モノ」、「カネ」が国境を越えて自由に移動するようになったことを言います。実際、長崎外大では多数の留学生が学んでおり、多くの日本人学生が海外に留学します。これは「国境を越えた人の移動、グローバル化」であり、そのために長崎外大では留学生向けに日本語や日本理解の授業を開設し、欧米の留学生には英語で授業をしています。ホームページや学内のお知らせや掲示物も多言語化を進めています。外国の協定大学と頻繁に外国語をつかって連絡調整を行う必要があり、そのために外国人の職員や、外国語が使えて、異文化に理解があり、外国人と一緒に仕事ができる日本員職員を積極的に採用しているのです。これは、大学自体のグローバル化ですが、このようなことが社会のあらゆる場面で進行しているのです。
  ケンタッキーやマクドナルドは食のグローバル化、韓国ドラマやK-ポップスは、文化のグローバル化の例です。皆さんは100円ショップで売られているものは主に中国製品ですが、これが買えない、となったらどんな生活を想像しますか? これはモノの移動、つまり貿易の自由化の例です。
  長崎外国語大学は、このように今日、社会のあらゆる場面で進展しているグローバル化に対応できる幅広い国際的な職業人、つまりグローバル人材の育成を目指しています。グローバル人材というと、世界を飛び回って活躍している人のイメージが浮かびますが、もちろん日本国内で仕事をする場合も含んでいます。長崎のような一地方で仕事をするときでも、観光、漁業、製造業などの分野で中国や韓国などアジアの人たちと一緒に仕事をする機会が増えていますし、例えばPM2.5のような大気汚染物質など、環境問題を考える場合にもグローバルな視点が不可欠です。
  それでは、グローバル人材として活躍するためには、どのような力を身につけておく必要があるのでしょうか。3つのポイントがあります。

  (1)「日本人としてのアイデンティティをしっかり持って主体的に物事を考えることができる。」
  私たちは、案外自分が日本人だということを知らない。留学する学生に、日本の歴史や文化をしっかり勉強していきなさいと助言するのですが、帰国しての感想で多いのは留学してみていかに日本について知らないかがわかったというものです。中国人の留学生が長崎外大に来てみて、日本人学生が皆アメリカ人のように英語しか話さず、アメリカ人のように行動し、日本の歴史や文化のことを聞いても満足のいく答えが返ってこなかったら、本当にがっかりすることでしょう。グローバル化する世界では、日本人は、他ならぬユニークな文化や伝統、精神をもった日本人であるがゆえに、魅力や価値があるのです。

  (2)「言語、文化、価値観の異なる人びとに自分の考えを効果的に伝えることができ、その違いを乗り越えてお互いを理解することができる。」
  「そのためには「語学力」をしっかり身につけること。」できれば少なくとも二つの外国語に習熟するということが大切です。今日、英語は、世界で広く使われており、特に大企業のビジネスでは英語で十分仕事がこなせるようになってきています。しかし、英語でビジネスを処理できたとしても、外国で暮らし、仕事でも一定の成果を上げるためには、心のひだに触れる真のコミュニケーション力が必要です。そのためには、その文化を深く理解するとともに、その人々の言語でコミュニケーションを図ることが一番です。グローバリズムの潮流のなかで英語万能主義の風潮がありますが、ローカルな文化や言語がかえって価値を持つようになっていると思います。
  語学力は、単に「外国語をペラペラしゃべる」のではなく、人と人との「コミュニケーション」に効果的に生かされるのでなければ、何の意味もありません。相手の言葉によく耳を傾け、正しく理解したうえで、それに対する自分の意見を明確に相手に表現し、伝える。場合によっては、様々な説明の方法や手段を駆使して、意見の異なる相手との相互理解を得る、これこそ重要なのです。

  (3)「新しい価値を生み出すために言語、文化、価値観の異なる人びとと一致協力して行動することができる。」
  「新しい価値を生み出す」とは、これまでになかったようなモノやサービスを作り出して人々の生活を豊かにすることです。よく引き合いに出されるのは、SONYのウォークマンやアップル社のiPad、インターネットがあります。日本人はモノづくりにかけては素晴らしい技術を持っているのですが、モノを「製造」する技術は素晴らしくても、あるモノと別のモノとを組み合わせることによってどのような新しい価値を付加できるかについて、つまり、「創造力」、「構想力」と「感性」を動員してこれまでになかった新しい価値を生み出すことについては、日本人は不得手であると言われています。言語、文化、価値観の異なる人びとと一致協力し、それぞれの持ち味を生かすことができれば、人々の暮らしを豊かにするような新しい価値を生み出すことができるはずです。

  纏めますと
  ①日本人としてしっかりした自分をもち、自分の頭で考えることができる。
  ②言語、文化、価値観の異なる人びとに自分の考えを伝えることができ、その違いを乗り越えてお互いを分かりあえる。
  ③言語、文化、価値観の異なる人びとと一致協力して行動することができ、人々のために自分の持ち味を生かして役に立つことができる。

  では、長崎外大で「どのように学ぶ」のでしょうか。
  長崎外国語大学の学生の中には伝統的な若い日本人学生以外に社会人や世界各国からの留学生も多数います。教員から学ぶことはもちろんですが、留学生から外国語や異文化を学び、豊かな社会的経験をお持ちの社会人学生の方から多くの知恵を学ぶことも大切です。留学生とともに学ぶ、社会人と共に学ぶ。長崎外国語大学は、言語、文化、価値観の異なる人びとがそれぞれの立場や違いを尊重しながら、相互に教え合い、相互に学び合う「共同体」なのです。 「学びあう共同体」の主役は、皆さん学生であることは言うまでもありません。今、大学が努力して取り組んでいることは、教員が一方的に知識を教え込む教員中心の教育から、学生の皆さんが主体的自立的に学んでいく教育への転換です。その一つの方法として、コンピュータを活用した「学修ポートフォリオ」という仕組みを作っています。このポートフォリオに皆さんが日々の学びを記録し、自ら学習成果を振り返るとともに、目で見える形でその情報を教員や友人と共有しあい、学習成果を相互に評価してもらうことによって、学びの質をステップ・バイ・ステップで高めていくというものです。
  もちろん、学生の皆さんが主体的自立的に学ぶといっても、そこには一定の方向性と目標が必要です。卒業時に、どのような授業や学習プログラムを選択すれば、どのような能力が身に付つくのか、なにができるようになるのか、という学習到達目標が、あらかじめ教員にも学生の皆さんに示されています。このガイドラインに従って、将来の目標を見据えながらしっかりと学んでいただきたいと思います。

  最後になりますが、もっとも重要なこととして、みなさんは「何のために」大学で学ぶのか。
  私たちは、個人主義ということで、ともすれば自分の世界に引きこもりがちになります。しかし、大学であれ、社会であれ、世界であれ、どれも個人を超えて私たち自身が手を結びあって造りあげているものです。 今、皆さんが長崎で生活し、学び始めようとしていることが、ご家族をはじめ友達、教師や職員など様々な人々との繋がりのなかではじめて可能になっているのです。このことに気づけば、皆さんもまた、積極的に、そうした世界、大学という「共に学び合う共同体」へ深く関わろうとする努力が期待されているのです。

  何のために学ぶのか。その答えとして聖書のことばを紹介して私の式辞を締めくくりたいと思います。

  「あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである」

  塩は、人体が絶対に要求する人間の生存になくてならないものです。人体には0.7%の塩分が必要であり、1日10~15グラム摂取しなければ人は生きることができません。塩は味をつけ、腐れを防ぎ、清める役割を果たします。

  地の塩となって、私たち自身が手を結びあって造り上げている社会のため、皆さんの助けを必要としている世界の人々のために、意味を与え、役に立つことができる人になる、そのために、しっかり学び、力をつけてください。

  新入生の皆さん、ようこそ、長崎外大へ。