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学長スピーチ 2010年度秋季 長崎外国語大学・長崎外国語短期大学卒業式 式辞 (2010年9月30日)

2010年度秋季 長崎外国語大学・長崎外国語短期大学卒業式 式辞

2010年9月30日
長崎外国語大学 学長 池田紘一

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。教職員、大学関係者を代表して心からお祝い申し上げます。秋季卒業生は全部で50人、中国からの留学生46人、日本人卒業生4人、そのうち短期大学卒業生1人です。

私はまず中国人留学生の皆さんに申し上げます。
皆さん、留学生活はいかがでしたか。長崎外国語大学での勉学の成果はありましたか。日本語は上達しましたか。日本の歴史や、文化や、社会について、何を学びましたか。長崎での日常生活はどうでしたか。日本人の友達や知り合いはたくさんできましたか。皆さんはこの留学の体験から何を学びましたか。

私は皆さんが入学されるときにこう申しました。留学において最も大切なことは、その国の生きた現実の中に飛び込んで、自分自身の心と体で、異なる文化を直接に、直に体験することである。異なる生活習慣、異なる考え方、異なる感じ方と対決し、これを理解すべく努めることである。言葉もまた、このような理解なしには、本当に上達することはない。
第二に、そのプロセスを通じて、自分の母語、自分の文化、自分自身と改めて向き合い、自分自身を再発見することである。そして願わくは、言葉や人種や宗教や国の壁を越えて、人と人とが、同じ人間として対話し、理解し合うことの重要性に改めて気づくことである。

さて、皆さんが留学経験によって、どこまで日本を知り、また日本人を知ったか、またどこまで自分の国を再発見し、自分を再発見したか、これはいますぐには分からないことです。帰国して、時間が経つにつれて、ゆっくり、少しずつ分かってくることです。
しかし、留学に意味があったかどうか、留学がためになったかどうか、これを判別する手軽な方法が一つあります。それはつまりこうです。

皆さんは中国に帰ったら、中国で新たなカルチャーショックを受けるでしょう。少しばかり、自分の国を外国だと感じるでしょう。あるいは、皆さんの友達が久しぶりに帰ってきた皆さんを見て、「おまえは少し変だ、以前とは感じが違う、何だか外国人みたいだ」と言うかも知れません。もしそうであれば、しめたものです。皆さんの留学には意味があったのです。それは皆さんの中で何かが変化した証拠です。人間的に成長した証拠です。人間として大きくなった証拠です。
それでは、帰国して久しぶりに会った友達が、皆さんに向かってこう言ったらどうでしょう。「久しく会わなかったけれども、おまえは全然変わっていないな、おまえは四年前とまったく同じだ、嬉しいよ」――残念ながら、留学には、あまり意味がなかったということです。さて皆さんはどちらでしょう。それは帰国したらすぐ分かります。
もちろん皆さんの中には、これからも日本で仕事をする人、あるいは日本の大学院に進学する人もあるでしょう。その場合も、これまでに学んできたことが試されますし、先に申し上げた留学の二つの課題は、現実の問題としてますます重要性を帯びてくるでしょう。

世界はいま多くの問題を抱えています。世界的な経済危機は依然として続いており、貧しい人とお金持ちの貧富の差も拡大しています。文明や技術の発展の中で自然環境をどう守るかという難題にも直面しています。同時に政治的、宗教的、人種的な争いも後を絶ちません。核戦争への不安も拭い去られてはおりません。皆さんの時代である21世紀は、解決しなければならない多くの難しい問題をかかえています。

皆さんは若い。私は学生時代に毛沢東の本をたくさん読みましたが、最も感動した言葉は、「若さ、貧しさ、無名」――これこそ青年の大きな可能性であるという言葉でした。若くて、お金がなくて、無名であるということは、すばらしいことです。皆さんはおそらくこのすべての要件を備えているでしょう。これからどのような道に進まれるにせよ、この若さの持つ大きな可能性を生かして、希望と夢を捨てずに、世界が抱えている問題を自分の問題と考え、二十一世紀の世界に平和が実現するための担い手となってください。そのとき長崎外国語大学での留学の経験、長崎の町での、国の違いを越えた、人と人との、人間としての、国際交流の経験が、少しでも生かされることを願っています。そしてどうか、留学の中で築いた日本との絆、日本の友人たちとの関係、長崎外国語大学とのつながり、長崎との結びつきを忘れないで下さい。

さて、日本人卒業生の皆さん、いま留学生の皆さんに申し上げたことを、ほとんどそのまま皆さんへの餞の言葉としたいと思います。皆さんはこれまで外国語と取り組み、外国の文化について学び、またさまざまな授業を通して広く教養と専門知識を身につけてきました。しかしこれからがそれを本当の意味で試されるときです。他者の発見、自己の再発見、対話と相互理解と相互協力の重要性の認識、つまり外国語力とコミュニケーション力と人間力の獲得の努力――これらの努力は実社会で直ちには役立たないように思われるかも知れません。しかし、皆さんがこれから先どんな道を進もうとも、またどんな困難にぶつかろうとも、大学生活で身につけたことは、いわば人間的な底力として、目に見えない大きな力を発揮するでしょう。そして、いついかなる場合も、ただ単に個人の幸福を追い求めるだけでなく、つねに日本が抱える、東アジアが抱える、いや世界が抱えるさまざまな難題を自らの問題と捉え、その解決の一翼を担うという責任と自負を持ち続けてください。21世紀は皆さんひとりひとりが作り出してゆくのです。

長崎外国語大学、長崎外国語短期大学の卒業生の皆さん、今後のご活躍を心から祈っています。