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2010年度秋学期 長崎外国語大学入学式 式辞 |
| 2010年9月24日 長崎外国語大学 学長 池田紘一 |
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新入生諸君、入学おめでとう。今年の夏は世界的な天候異変のせいで、長崎でも本当に暑い日が続きました。その暑さも一段落して、今日は雲一つない清々しい秋晴れです。こういう秋晴れを日本では「日本晴れ」とも申します。晴れた空を独り占めにしたような言い方ですが、秋は収穫の季節でもあり、行楽や読書に最適の季節でもあり、そういう秋の到来への喜びを表現したものです。 この素晴らしい季節の始まりに、秋学期の新入生として、正規学生と短期留学プログラム(JASIN、NICS)学生とを合わせて177人の学生諸君を迎えることになりました。その内訳は、中国から117人、台湾から4人、韓国から8人、アメリカから36人、イギリスから2人、フランスから6人、ドイツから2人、南米のコロンビアから1人、北欧のノルウェイから1人です。ちなみに、コロンビアとノルウェイから留学生を迎えるのは本学としては初めてのことで、殊のほか嬉しく思います。 長崎学院長崎外国大学は、キリスト教の教えを建学の精神としています。皆さんが手にしている入学式プログラムの表紙に本学の校章が記されていますが、これはV を三つ重ねて図案化したもので、先ほどの聖書朗読にもありましたように聖書の中のイエス・キリストの言葉、VIA VERITAS VITA(わたしは道であり、真理であり、命である)の頭文字の組み合わせです。 本学はいまこの建学の精神を継承して、特に国際交流に力を入れ、日本人学生と留学生とが共に学び、交流を深め、知識と経験を分かち合い、学生たちが真に国際的な視野を備えた人間に成長することを教育の目標にしています。「キャンパスが世界」、これがわが大学のモットーですが、事実ここには、中国があり、台湾があり、韓国があり、アメリカがあり、イギリスがあり、ドイツがあり、フランスがあり、そしていまコロンビアがあり、ノルウェーがあります。そしてもちろん日本があります。小さな縮図ではありますが、キャンパスが世界なのです。 けれども、人は誰しも、良きにつけ悪しきにつけ、自分が生い育った環境の影響を身にまとっています。それは容易に脱ぎ棄てられるものではなく、また自らの原点として大切なものでもあります。ですから、人間的に交わるといっても簡単なことではなく、早晩、言語や文化の大きな壁にぶつかることになるでしょう。来日以前に皆さんがもっていた日本に関する予備知識が役立たず、数々のカルチャーショックを味わうことにもなるでしょう。食事一つをとっても(食事もまた紛れもないカルチャー、つまり文化です)、調理法が違う、味が違う、食べる作法が違う。人と人との付き合い方や礼儀作法にしても、外見上は何もかも違う。 文化の最たるものは言葉です。皆さんがこれから学ぼうとしている日本語です。言葉は単なる伝達の手段でもなければ道具でもありません。どのような国の言語にもそれを育んできた文化やものの考え方や感じ方の長い歴史が息づいています。皆さんの母語についても同じです。しかしその事実に本当に気づくのは外国語を学ぶ苦闘を経験したときです。 最後に申し上げたいのは、皆さんは長崎の地で勉強するのですから、どうか留学のチャンスを生かして、ぜひとも長崎の町と人に親しんでいただきたいということです。長崎で学ぶということには、日本の他の町で学ぶのとはまったく異なる、特別な意味があります。長崎は、昔から中国をはじめとする東アジア諸国との交易で栄え、十六世紀のポルトガル船来航以降は海外貿易とキリスト教伝道の中心地となり、二百五十年に及ぶ鎖国時代は西洋文明に開かれたほとんど唯一の窓だったからです。つまり長崎は古くから外国の文化と外国の人々に接し、いわば政治・経済・文化における輝かしい国際交流の舞台であり、近代日本の発祥の地だったのです。 本日の入学式にあたって、これから皆さんが長崎外国語大学で大いに勉学に励み、充実した学生生活を送るとともに、長崎の町に親しみ、将来皆さんの国と日本、皆さんの故郷の町と長崎との交流の架け橋になられるよう祈念して、学長の式辞といたします。 |