この短編は松本清張の戦争体験、特に朝鮮での衛生兵としての体験を色濃く反映した作品と言える。舞台は京城郊外の竜山であるが、ここは、松本清張の最初の任地であった。そこの医務室での様子が描かれているが、兵隊が衛生兵を一人前の兵隊として見ない描写などは、その後の清張の作品に色々な形で一貫して流れる反骨精神が秘められている所であろう。
軍医の元に、軍医見習士官が来るようになった。最初は丁寧に患者と向き合っていた見習士官がすぐにその姿を変えてしまうのは、当時の社会情勢がそうさせたのか。
この作品は、昭和36年に発表した『厭戦』の下書きと見なしても良いほど重なる部分が多い。また、『繁盛するメス』(昭和37年)では、衛生兵が後にニセ医者となるが、それを連想させる部分もある。