中国語学を専攻し、主として漢字音に関心を抱いています。これまでに行ってきた研究は、『切韻』や『広韻』を主とする韻書研究、『文選音決』や『経典釈文』等の音注研究、日本漢字音研究です。また、25年以上、日本漢学(瀬戸内海地域の近世漢学者を中心とした漢詩・漢文)も研究しています。基本的には文献学で、資料の蒐集、精読、思考、論考のまとめと進んでいきます。現在は音注による中国古典の本文解釈と、また古い漢字研究資料ではなく、私達に身近な日本漢語・漢字音とに興味があります。
私は50年前、大分県のある高校に入学しました。二年生になると、同級生300人余りの内、50人だけが数学Ⅲ(確率・微分・積分など)と物理の授業を受けることができました。私は理科系志望(化学)で、幸いその中に入りました。しかし、特に物理ができず、二年生の2学期には早々と諦めて、文科系に転向しました。それも法律学にするか、得意であった国語古典(日本古典・漢文=中国古典)にするか、迷いました。担任等に相談して、三年生になってから大学の文学部で古典を専攻することに決めました。次に日中どちらの古典にするか、「二者不可得兼」(二者択一)です。科目担当の先生に相談し、結局漢文、中国古典専攻に決めました。大学では好きな中国古典(論語・唐詩で週2コマ)と中国語(文法・講読・会話作文で週3コマ、内1コマの中国語会話は香港出身の王超先生担当。二年次に伊藤虎丸先生から艾蕪「南行記」の講読を受け、それ以来今もこの作家の作品を愛読しています)の授業を、いずれも10~15人くらいの少人数で受けました。専門課程へ進んで、現代中国語以外に魯迅・紅楼夢などを読みました。専攻生5人の授業でした。その後、論文研究では古字書『説文解字』を扱いました。大学院ではたった一人で授業を受け、諸先生の内、楊啓樵先生からは主に古典文学を中国語のみで教わりました。修士論文では『文選』の音注『音決』を扱い、その研究の必要上「切韻系韻書」や日本漢字音を扱うことになりました。教員になってからも、そのような音注研究に従事し、また文部省の科学研究費による研究分担者の一員となり、宇和島藩の漢学者研究に取り組むようになりました。それ以前から時々神社仏閣の漢字資料や個人蔵の書画の讃、その他の読解を依頼されるようになり、今では一段と日本の漢字・漢語にも興味・関心が行くようになりました。なお、広島大学での定年6年前くらいから、私も中国人留学生を担当するようになりました。毎年一人の博士課程前期の大学院生(みな女子院生)のチューターとなりました。これ以外に、短期の留学生や研究生(これらも全員女子学生でした)も担当しました。どの学生・院生も日本語が上手で、通常の授業以外に毎週1回、1対1の論文指導がありました。日中比較文学、語学等の内容で、彼女達は実に真面目によく勉強をし、お蔭で私も勉強になりました。様々な奨学資金、その他の推薦書もよく書きました。おおむねそれがうまく行って、彼女達は奨学資金などが貰えました。今でも留学生指導の楽しかったことを覚えております。全学学生生活委員も10年以上連続して務め、この全学委員長を1年、それと前後して副委員長を2年務めました。また、新入生が入学した4月に催される、1泊2日の文学部新入生歓迎オリエンテーションキャンプ(略称、オリキャン)も定年まで11年連続して、それどころか定年後も1年間これに付き合いました。前代未聞のことでしょう。私はそういう行事が好きでしたから、その折に他の教員や学生達とよくお話をしたものです。こうしてみると、不愉快なことも無かった訳ではありませんが、私は結局、学生さんが好きであったということでしょう。
1969年3月 広島大学文学部文学科中国語学中国文学専攻卒業
1973年3月 広島大学大学院文学研究科修士課程中国語学中国文学専攻修了
1978年12月 広島大学大学院文学研究科博士課程中国語学中国文学専攻単位取得退学
博士(文学)、広島大学、1997年
以上、広島大学文学部・大学院文学研究科
[その他特筆すべき事項]
2007・8・9年度:中国人留学生の研究生や大学院生の指導を行った。チューターとして数名の中国人留学生に対し、通常の授業での専門的な知識を授けるばかりでなく、日本の様々な情報や生活上の諸常識をも分かり易く教えて指導した。
[最近5年間の研究]
『文選音決』による『文選』の本文解釈や、『経典釈文』等の音注による経書(例えば『論語』など十三経)の解釈など、音注を音韻学資料として扱うのではなく、本来の役割である本文解釈に活かす研究を行っています。また、最近は日本学術振興会の科学研究費による、他専攻を含む研究者と一つの組織を作り、共同して世界遺産・厳島の総合的研究も行っています。更に、新聞・図書・雑誌、テレビ・映画、インターネットの記事、また家族や他人との会話、手紙、お菓子の包装紙などに見られる、日常的に使用される、ごく卑近な日本漢語・漢字音とに関心を持って追究しています。
など
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